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ゆっくりとさよならをとなえる

いざ、生きめやも/さよならの学者に、なりたい

【小説】父子の会話

息子「毎回くだらないことに精を出して、世を正したつもりでいる人が気持ち悪くて、一冊小説を書きあがられそうなんです」

父「またかの女か」

息子「ええそうです。あの負けず嫌いが自分の勝ちのしるしを欲しがって、私にかかわってくるのです」

父「それでいてかの女は以前《もうお前には関わりたくないので関わらないでください》と自分からもっともらしくもったいぶって言ってきていたな」

息子「その通りです、お父さん。それで私もやれ幸いだと思っていたんです。もうこれ以上面倒なかの女にかかわらずに済むのだと思って」

父「かの女はお前を狂人だと公の場でののしったりもしていた。しかし、もうそれはかの女の正体こそ狂人であるという告白をかの女自らしたも同然だ」

息子「そして、かのおんなは《もう関わらないでください》と私に言いつつ、関わらないでいる私に対して、名前を変えて向こうから私にかかわってきているのだから、ある意味ではかつての告白を自ら裏付けているのです」

父「かのおんなが狂人であるという告白を自ら裏付ける行為をお前は見ているんだな」

息子「いえ、私は見てはいません」

父「かの女はつまりは捨て身でお前に狂人としてのかかわりを持とうとしている」

息子「いいえ、お父さん。かのおんなは捨て身で私にかかわりを持っているのはたしかだけど、自らを狂人だとはつゆほども思っていないのです」

父「それはかのおんなが狂人であることのなによりの証左だ。狂人は真実を話すがゆえに狂人であることをやめられないのだ」

息子「趣味は、世直しだと言っているくらいですから」

父「趣味が世直しだなんて、かわいげがないな」